【あらすじ】 20XX年、某国にてナノマシンによる手術に成功。数年後には世界中で実用化され｢切る手術｣はほとんど必要がなくなる。ナノマシンによって身体の内側から行われる施術には麻酔が要らず負担も少ない、これまで不治の病とされてきた病気の治療も可能になり｢治療｣を手軽なものにした。技術の恩恵に人々は歓喜した。 20XX年、某国にて最初の事件が発生する。被害者は知らぬ間に体内にナノマシンに侵入され他者から記憶の改竄や身体の改造を受けていたのだ。このニュースは世界中の人々を震撼させた。自分もいつ他者によって勝手に身体や記憶を弄られるか分かった物ではないのだから食事も気が気では無い。各国は早急に対策に追われた。 　数年の後、人々は体内にセキュリティナノマシンを常駐させ他者によるナノマシンの侵入から身を守るのが一般的となっていた。ナノマシンの扱いについては国によって様々だが国主導で開発、管理されるのが主流で日本においても同様である。操作には国・製造メーカー・医療機関それぞれで管理される管理コードが必要とされ例え医療従事者や本人であっても勝手に操作することはできず活動の内容は必ず履歴が残るようになっている。一部から国による民衆の操作の危険を訴える声があり義務化はされなかったがほぼ全ての国民が利用することとなった。防衛の手段ができたことで人々は平穏を取り戻したのだった… －－－－－－ 　男はいちプログラマーであった。国からの委託で国内で利用されるナノマシンを開発、製造する３社の内の最もシェアの高い１社に務めている。通常は携わっているプログラマーといえどナノマシンを勝手に操作することはできないが男は製造されるナノマシンのプログラムに独自の命令コードを仕込み、それは幾重もの監視と検査をくぐり抜けてしまう。 　社員の多くは自社のセキュリティナノマシンを利用しているので一度通ってしまえば社員を操りその後も発覚を免れ状態を維持するのは簡単だ。このコードでの操作は履歴にも残らない。男は多くの人々を操る力を手にしたのだ…